「小説家になろう」での隠れた名作。
大好きな、おすすめの作品です。
「行き遅れた領主の娘の婚姻譚」 作者:百坂陸
異世界恋愛のジャンルですが、ちょっとグロ、ホラー要素も有りのファンタジー色強め。
気に入った作家さんのおススメで読んでみましたが、これは大当たり!!知ることができて本当に良かった。
流れるような美しい口語体がとても読みやすくて魅力的。
情景が鮮やかに浮かぶような描写が全体の暗いトーンをものともせず物語に彩りを与えます。
主人公の身に起こる出来事が理不尽すぎて辛くて、読み進めるのがしんどい時もありますが語りが上手くて結局止められません。
そしてそんな主人公と読者の心を慰めるように大型ワンちゃんが可愛い。この子がいなければヤバかった。
全ての生き物に魔力があるのが当然の世界で魔力がなく歩く死体とまで言われ存在を軽んじられるヒロイン。
ヒロインとは真逆で強すぎる魔力を持つ為にその存在を厭われる魔術師。
それぞれ辛い人生を送ってきたのに心優しい2人が不器用に心を通わせて行く様子が切なくて美しくて。
そしてヒロインが嫁ぐ予定の地の不穏さ。その地の領主に嫁ぐ予定なのですが、国王からの一方的な命令のため全く歓迎されず、むしろひどく疎まれてしまいます。
しかもなにやらその地には隠された秘密があるようで・・・。
ヒロインが敵地で身を守るすべもなく命の危機にさらされ、ひとり死を覚悟します。家族や故郷のために自らを犠牲にする覚悟を決めるヒロインが健気でそれも切ない。
最後は激しい戦いになり、ますますのめりこんで読んでしまいました。
ヒロインの独白があまりにも詩的で涙が止まりません。
「雨になって会いに行く」こんなまっすぐで胸を打つ愛のことば、ヒーローもひとたまりもないはず。
多すぎる魔力のせいで周囲から忌み嫌われ、心の拠り所となる家族とも死に別れ、辛い人生を送ってきたはずのヒーローがそれなのに深い優しさを持っていてその不器用な優しさに心打たれます。
この小説は一貫して顔の造形に関しての描写が少なく、ヒーローの髪の色や目の色ぐらいしかハッキリ描かれていない為どんな顔してこんなセリフ言うんだ・・・と想像が止まることを知らず。
言葉少なでぶっきらぼう、なのに人の機微には敏感で深い愛情を持っている。
一本芯の通った強さを持つヒロインも素敵ですが、不器用で優しくそして強大な力を持つヒーローも格好良すぎて二人とも大好きです。
お話の中で常に不穏な雰囲気が漂い、どう見ても辛い結末になるのでは・・と恐れながら読むのを止められませんでした。
もっと多くの人に読まれて欲しい傑作です。